士業専用ダイヤル
約40年ぶりの民法改正で
新しくできた配偶者居住権について、
不動産鑑定士の立場から
評価の中身を見ていきたいと思います。
絶対的な評価の解説ではなく、
鑑定士として疑問に思ったことを挙げてみた
あくまでも一考察という位置づけです。
以下の3点を問題提起として
取り上げたいと思います。
【基準となる土地建物価格】
国税庁「No.4666配偶者居住権等の評価」によると、
土地:居住建物の敷地の用に供される土地の相続税評価額
建物:居住建物の相続税評価額
となっています。
要は、土地は路線価に基づいた評価額であり、
建物は固定資産評価額を使って評価するということです。
(倍率地域については、土地も固定資産評価額×倍率)
このブログでもこれまで上げてきたとおり、
財産評価基本通達は非常によくできた制度ですが、
千差万別の不動産について、
100%完全に適正な評価を行えるものではありません。
とすると、スタートとなる上記価格について、
適正に評価されていない場合があり得るということです。
適正に評価されていない価格に基づいて
配偶者居住権の価格を評価しても、
適正ではない価格になっている可能性があります。
基準となる土地建物価格が適正に評価されているか
不動産鑑定士にお問い合わせ頂くことも
一手ではないかと考えます。
【現在の価格or将来の価格】
配偶者居住権付の土地の評価額は、
現在時点の評価額×複利現価率を乗じて求めています。
しかし、割引現在価値を求める場合、
本来的には、配偶者居住権が消滅する
将来時点の評価額×複利現価率に
なるのではないかとの疑問が生じます。
具体例を挙げると、
現在時点 5,000万円
将来時点 2,000万円
存続年数20年の複利現価率 0.554
5,000万円 × 0.554 = 2,770万円
2,000万円 × 0.554 = 1,080万円
ただ、現実的に20年後の評価額を
正確に求めることは難しく、
現在時点の価格を将来時点の価格として、
もしくは土地価格の変動なしとして
“取り扱う”ということなのかなと思いました。
しかし、人口減少で長期的には
不動産価格が下落傾向にある日本において、
将来の土地価格の変動(下落)リスクは大きいです。
【 時 価 】
平成24年8月16日裁決によると、
相続税法第22条に規定する「時価」とは、
「取得の時における不特定多数の当事者間で
自由な取引が行われる場合に
通常成立すると認められる価額を示すもの」
とされています。
ここで一般論として疑問に思うのは、
5,000万円の土地を20年後に取得できるとして
2,770万円で買う人がどれだけいるのか、です。
期間が5〜10年と短くて有期であればまだしも、
20年などの長期や、期間が決まっていない場合、
上記の価格で自由な取引が通常成立するのでしょうか。
税務署はこの評価しか受け付けないとのことですが、
本当の“時価”かというと、その他の場面では
不満や争いが生じる可能性もありそうだなと感じました。
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