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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/06/28
近年は日本の農業が見直され、
法人の農業への参画も増えてきています。

今回は傾斜地勢の農業用施設用地の評価について、
相続税評価額と現実の売買価格(時価)を
比較してみようと思います。

通達評価は画一評価であるため、
相続税評価額と時価が大きく乖離してしまい、
問題となるケースがあります。

今回はやや特殊なケースではありますが、
その評価額が時価として妥当性を有するかどうか
常に確認することが大切です。

【農業用施設用地とは?】

農業用施設の用に供されている宅地です。

農業用施設には、畜舎、蚕室、温室、
農産物集出荷施設、農機具収納施設などが該当します。

【財産評価基本通達24-5】

通達評価では、
農地としての価格+宅地造成費=農業用施設用地の価格
となります。

<試算例>
・通常の農地としての価格:500円/㎡
・地 積:3,000㎡

<通常の農地としての価格>
 500円/㎡ × 3,000㎡ = 1,500,000円

<農業用施設用地としての価格>
・傾斜度:3度超5度以下
 (500円/㎡ + 18,600円/㎡)× 3,000㎡ = 57,300,000円

・傾斜度:25度超30度以下
 (500円/㎡ + 59,100円/㎡)× 3,000㎡ = 178,800,000円

農業用施設用地として評価をすると、
通常の農地としての価格よりはるかに高い評価額になります。

ここで注目して頂きたいのは、
傾斜度が大きいほど宅地造成費が高くなり、
結果として相続税評価額が高くなっています。

しかし、現実の売買価格(時価)としてはどうでしょうか。
傾斜度が大きいほど利用効率が悪くて需要が無く、
現実の売買価格(時価)は逆に低くなることの方が
多いのではないでしょうか。

【まとめ】

財産評価基本通達はよくできていますが、
どうしても画一化された評価であるため、
現実とかけ離れた評価になることもあります。

通達だから大丈夫と安易に評価してしまうと、
過大な評価額(税額)となる場合もあり、
時価として妥当かどうかのチェックが大切です。


2021/06/11
「相続税評価で、宅地の評価倍率が
1.1となっているのはどうしてですか?」

【評価倍率1.1の理由】

相続税評価額 :公示地価の80%水準
固定資産評価額:公示地価の70%水準

対象地の固定資産評価額を
相続税評価額の水準に合わせるために
70 × 1.1 = 77 ≒ 80
となるからです。

【公的価格バランス】

公示地価・基準地価を100=時価として、
相続税評価は80、固定資産評価は70
水準となっています。

■相続税路線価
路線価等は、1月1日を評価時点として、
1年間の地価変動などを考慮し、
地価公示価格等を基にした価格(時価)の
80%程度を目途に評価しています。

■固定資産評価
平成6年度の評価替えから、
土地基本法第16条や総合土地政策推進要綱等に基づく
「公的土地評価の均衡化・適正化」の要請により、
当時の相続税評価との均衡や、
昭和50年代の地価安定期における
地価公示価格に対する固定資産税の評価額の割合等から、
宅地の評価については地価公示価格等の
7割を目途に評価を行うこととされました。

【地目「雑種地」に注意】

雑種地の固定資産評価額に
そのまま宅地の評価倍率を乗じて
相続税評価額を出すことは、
適正な評価額とならない場合が多く、
否認されるリスクが非常に高くなります。

国税不服審判所平成16年3月31日裁決など、
雑種地の固定資産評価額に宅地の評価倍率を乗じて
否認された事例もあります。

<イメージ例>
宅地としての時価水準(100%水準)を
1,000万円とします。

宅地としての固定資産評価額(70%水準)は
1,000万円 × 70% = 700万円 となります。

雑種地としての固定資産評価額は、
仮に雑種地補正0.60とすると、
700万円 × 0.60(雑種地補正)= 420万円 です。
(利用状況や市町村によって減額割合は異なります)

宅地の評価倍率1.1倍を適用すると、
700万円 × 1.1倍 = 770万円(80%水準)
420万円 × 1.1倍 = 462万円(50%水準)

雑種地の固定資産評価額は、
地目補正が適用されて減額されているケースが多く、
雑種地の固定資産評価額に宅地の評価倍率を乗じると
このように大きな乖離が生じてしまいます。

特に、現況が宅地と類似する利用状況の場合や、
登記地目は「宅地」なのに、
課税地目が「雑種地」となっている場合など、
その固定資産評価額がどのように算定されているか
しっかり確認することが大切です。


2021/06/10
「不動産に抵当権が設定されているのですが、
評価に影響はありますか?」

【抵当権の評価への影響】

抵当権が設定されていることによる
鑑定評価額への影響は、基本的にありません。

「抵当権は減価要因ではない」ということです。

抵当権が交換価値を把握する権利で、
権利割合が変わるわけでもなく、
使用収益を制約するようなものでもないからです。

【登記簿乙区】

抵当権は価格に影響を及ぼさないため、
極論を言うと、評価にあたって
乙区欄の抵当権は読み飛ばしても大丈夫
ということになります。

一方、借地権(地上権・賃借権)、区分地上権、
地役権の設定の有無は価格に大きく影響するので、
しっかり確認する必要があります。

もちろん実務上は
抵当権を読み飛ばすことはなく、
各債権者の立ち位置や利害関係等について
確認することになります。

【金融機関(抵当権者)との関係】

抵当権が設定されていても、
不動産を自由に使うことができます。

処分も自由にできないわけではないですが、
実務的には優先弁済権を有する
金融機関と協議し、その同意を得た上で
売却することが一般的だと思います。

特に、共同担保となっている場合など
金融機関との協議が整わないと
現実的には売却困難となるケースもあります。

このような場合、
抵当権がない物件と抵当権がある物件で
現実的には差異があるようにも感じます。

【民法第369条】

「抵当権者は、債務者又は第三者が
占有を移転しないで
債務の担保に供した不動産について、
他の債権者に先立って
自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」


2021/06/07
「境界が未確定であることは、
土地の価格に影響がありますか?」

境界、筆界、所有権界など、
土地家屋調査士さんが活躍される分野です。

いわゆる境界が決まっていない、不明である、
明らかではない、境界紛争が起こっているなど、
土地の価格にどのような影響があるのでしょうか。

【価格への影響】

境界未確定であることは、
減価要因になる場合があります。

「場合がある」というのは、
個別的要因として個々の評価の際に減価する場合と、
地域の価格水準に織り込まれている等の理由から
個別的要因としては減価しない場合があるという意味です。

いずれにせよ、境界が確定している場合と比べ
境界未確定がマイナスの影響があることは明白です。

【評価に際しての考え方】

■周辺の不動産の境界が確定している場合

新しく分譲された住宅地や
地籍調査などで境界が確定している地域では、
標準的な土地(大半の土地)は境界確定しています。

このような地域の中にある境界未確定の土地は、
標準的な土地が境界確定されていることから、
個別的要因として個々の評価の際に減価が発生します。

■周辺の不動産も境界未確定の場合

古くからの農家集落地域などでは、
標準的な土地(大半の土地)は境界未確定です。

このような地域の中にある境界未確定の土地は、
標準的な土地も境界未確定であることから、
個別的要因としては評価の際に減価を行わないことが多いです。
地域の価格水準に既に織り込まれていると考えられるからです。

■境界紛争

境界紛争が起きているor起きる可能性が高い場合は、
通常の境界未確定の場合より減価の程度は大きくなります。

【相続税の物納】

境界未確定であることは、
地積増減の可能性、取引の際に問題が生じる可能性、
将来的な境界紛争の可能性など危険がいっぱいです。

さらに、相続税を払うために
土地を物納しようとしても、
境界未確定である場合は物納できません。

■国税庁 No.4214 相続税の物納
管理処分不適格財産
次に掲げるような財産は、物納に不適格な財産となります。
イ 不動産
(ハ) 境界が明らかでない土地

【まとめ】

以上のとおり、境界未確定であることは、
様々な問題が生じるリスクがあるため
土地の価格にマイナスの影響があります。

ただ、マイナスをどのように考慮するかは、
地域の標準的な土地と比べる必要があります。

みんなスーツを着ている中でパジャマは個性ですが、
みんなパジャマの中でパジャマを着ているのは普通です。

なお、境界問題で困った場合は、
不動産鑑定士ではなく、土地家屋調査士さんへ


2021/06/06
「そもそも鑑定評価ってなんですか?」

【鑑定評価とは】

鑑定評価とは、法律でも基準でも、
不動産の経済価値を判定し、
価格(賃料)として表示すること です。

ただ、これだけだと
誰でもできてしまうような気もしますよね。

■不動産の鑑定評価に関する法律(第2条)
不動産の鑑定評価とは、
「不動産の経済価値を判定し、
その結果を価額に表示することをいう。」

■不動産鑑定評価基準(総論・第1章第3節)
「不動産の鑑定評価は、
その対象である不動産の経済価値を判定し、
これを貨幣額をもって表示することである。」

【鑑定評価の手順】

鑑定評価の手順は、
不動産鑑定評価基準に定められています。

■不動産鑑定評価基準(総論・第8章)
① 鑑定評価の基本的事項の確定
② 依頼者、提出先等及び利害関係等の確認
③ 処理計画の策定
④ 対象不動産の確認
⑤ 資料の収集及び整理
⑥ 資料の検討及び価格形成要因の分析
⑦ 鑑定評価の手法の適用
⑧ 試算価格又は試算賃料の調整
⑨ 鑑定評価額の決定並びに鑑定評価報告書の作成

けっこういろんな手順があるんだなと
思って頂けるでしょうか。

どんな資料を集めるのか。
その資料や価格形成要因をどう分析するのか。
どのように鑑定評価の手法を適用するのか。

評価主体によって考え方が違う場合もあり、
これらの違いが結果の違いに直結していきます。

【練達堪能な専門家】

このような鑑定評価の手順を
適切に行って、適正な判定を行うためには、
やはり練達堪能な専門家である必要があります。

■不動産鑑定評価基準(総論・第1章第3節)
「鑑定評価は、高度な知識と豊富な経験及び
的確な判断力を持ち、さらに、
これらが有機的かつ総合的に発揮できる
練達堪能な専門家によってなされるとき、
初めて合理的であって、
客観的に論証できるものとなるのである。」

【まとめ】

“鉛筆なめなめ”などと
揶揄されることもある鑑定評価。

こうやって概要を見るだけでも、
様々な資料を集めて分析して、
しっかり評価していると思いませんか??


2021/06/03
「小規模宅地等の特例を適用する土地について、
鑑定評価で相続税評価額を
適正に見直すことはできますか?」

【小規模宅地等の特例は“天敵”】

小規模宅地等の特例を適用する土地は、
鑑定評価をするメリットが無いことがほとんどです。

小規模宅地等の特例は、
まさに「特例」として相続税評価額を下げるもので、
特例が適用されるからといって、
土壌汚染など具体的な減価があるわけではありません。

鑑定評価においては、
具体的な減価の要因がないものを
勝手に減価することはできないため、
小規模宅地等の特例は
鑑定評価の“天敵”となってしまうのです。

【小規模宅地等の特例の減額割合】

小規模宅地等の特例を適用するための要件は、
ざっくりいうと
被相続人または生計一親族の
事業用または居住用の宅地等で、
建物または構築物の敷地であること です。

この要件に該当すると、
限度面積はあるものの、
▲50%〜▲80%もの大きな減価となります。

しかし、鑑定評価においては、
被相続人等の事業用・居住用の建物敷地であることは
全く減価の要因にはなりません。
減額割合ゼロです。

【遺産分割における注意点】

小規模宅地等の特例は、
相続税評価額を下げる(相続税額を下げる)ためには
非常に大きな効果があるものです。

しかし、当該土地に
具体的な減価が発生しているわけではなく、
本来的な資産価値(時価)には全く影響がありません。

そのため、遺産分割をされる場合、
特に裁判や調停など分割方法でもめている場合は、
本来的な資産価値(時価)との乖離にご注意ください。

小規模宅地等の特例を適用した相続税評価額を
適正な「時価」であると主張されるケースも散見されます。

その価格(相続税評価額)が
どのような前提で評価されているのか、
しっかり見ていくことが大切です。

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