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士業に役立つ不動産評価まめ知識

2021/03/26

弁護士さんから頂く最も多いご相談は、

「相手方から出てきた鑑定評価書を見てほしい」です。

 

その中でも、特に共有物件の評価について。

古きよき伝統的な論点ではありますが、

今でも多く目にする共有減価と裁判上の評価について

検討していきたいと思います。

 

【原 則】

 

共有持分を評価する場合は、

使用・収益・処分の制約や

共有物分割の時間的・経済的負担を考慮した

共有減価(市場性の減退)を考慮します。

 

【例 外】

 

共有持分の併合、全面的価格賠償の場合は、

共有減価を行いません。

 

下記の書籍にも、共有減価を行わない旨の記載があります。

 

■「家庭裁判所における遺産分割遺留分の実務(第3版)」

  片岡武/管野眞一(編著) 日本加除出版株式会社

 

「不動産の共有持分(1/2)を有する相続人が

被相続人の共有持分(1/2)を代償取得する場合、

あるいはすべての共有持分を一括売却する場合などは、

共有減価は行わない。

 

「なぜなら、共有持分どうしが併合し、

完全所有権(共有持分100%)を取得するので

いわゆる併合利益が生まれ、

共有持分減価は消滅するからである。」

 

■「共有不動産の紛争解決の実務(第2版)」

  三平聡史著 民事法研究会

 

「全面的価格賠償においては、結果として

共有を脱する(単独所有になる)ことになる、

つまり、共有による制約・不都合はなくなります。

そこでの賠償額の算定においては

共有減価を適用しないのが一般的です。

(東京地判平成25719判例集未登載、

東京地判平成171019WLJ)」

 

【鑑定評価書の内容】

 

不動産鑑定士は、通常「正常価格」を評価するため、

上記原則に基づき、共有減価を考慮した

鑑定評価を行っていることが多いです。

 

正常価格とは、「市場性を有する不動産について、

現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる

条件を満たす市場で形成されるであろう

市場価値を表示する適正な価格」です。

 

そのため、他の共有者のためだけの価格ではなく、

正常な市場で成立する価格を出しています。

 

【不動産鑑定士との連携】

 

不動産鑑定士に鑑定依頼をされる際には、

どのような目的での評価なのか、

しっかり連携していくことが大切です。

 

認めてもらえない共有減価を考慮して価格が下がっても、

最終的には共有減価無しの価格になってしまったりすると、

依頼者との信頼関係も崩れてしまいかねません。


2021/03/04

相続税路線価は時価の80%となっています。

これっていつからなのでしょうか?

また、どのような経緯で80%になったのでしょうか。

色々調べてみました。

 

【令和2年路線価】

 

国税庁ホームページでは、

「路線価等は、11日を評価時点として、

1年間の地価変動などを考慮し、

地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度

目途に評価しています。」

とされています。

 

【いつから80%になったのか】

 

平成4年分の路線価からです。

平成3年分までは70%水準で評価されていました。

 

割り戻すための割合が異なりますので、

価格の連続性に注意が必要です。

 

路線価図の説明を読むと、平成4年分からは

路線価評定の基に「公示価格」が加わっています。

 

(平成3年分 路線価設定地域図)

「売買実例価額、精通者意見価格等を基として評定」

(平成4年分 路線価図)

「売買実例価額、公示価格、精通者意見価格等を基として評定」

 

【平成4年度の税制改正に関する答申】

 

平成312月に出された税制調査会の

「平成4年度の税制改正に関する答申」によると、

「平成4年分の評価から、

㋑評価時点をこれまでの前年71日から

 地価公示価格の評価時点である当年11日に変更するとともに、

㋺評価割合を地価公示価格水準の80%程度に引き上げる

ことによりその適正化を図ること」

と記載されています。

 

「平成4年から実施される土地の相続税評価の適正化は

このような観点を踏まえ、金融資産に比べ土地が有利になるという

相続税課税上の歪みを是正し、土地の資産としての

有利性を縮減することにその眼目がある」とのことです。

 

【平7.1.31裁決、裁決事例集No.49 408頁】

 

平成3年分路線価について「判断」で、

「地価公示価格、売買実例価額及び

不動産鑑定士等の精通者意見価格等を基に、

公示価格水準の70パーセント程度により評価されている。」

 

「この評価水準は、相続税等の課税に当たって

路線価が1年間適用されることから、

その間の地価変動にも耐え得るものであることの必要性など

評価上の安全等を考慮して取り入れられているものと認められる。」

 

【坪単価表示】

 

昭和47年分路線価までは、

「路線価は3.3平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」

 

昭和48年分路線価からは

「路線価は1平方メートル当りとし、1,000円単位で表示した。」

となっていますので、路線価の見方には注意が必要です。

 

【固定資産評価額】

 

固定資産評価額については、

平成6年以降は地価公示の水準の7割程度となっています。

そのため、平成5年以前との価格の連続性に注意が必要です。

士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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