士業専用ダイヤル
今回は公簿面積と実測面積が異なる場合です。
面積は総額の大小に直結します。
普段は単価ばかりに目が行きがちですが、
単価×面積=総額もしっかり見てください。
実際の売買代金は、この総額になります。
公簿と実測
公簿面積とは、登記記録(登記簿)記載の面積のことです。
公簿が最近測量して登記されたものであれば、
実測面積とほぼ一致します。
しかし、昔からの地積をそのまま引き継いでいる場合や
分筆した残地として面積が計算されている場合は、
実測面積と大きく異なることも珍しくありません。
また、縄伸び縄縮みが大きい地域もあります。
仮に、公簿150㎡なのに、実測300㎡だと、
同じ100,000円/㎡という土地単価が正しくても、
総額が1,500万円と3,000万円とで大きく異なってきます。
単価と総額
たとえば、新築戸建の相場が3,500万円とした場合、
土地1,500万円であれば2,000万円の建物を建てられます。
一方、土地3,000万円では、総額3,500万円では足らず、
少なくとも総額4,500万円〜5,000万円程度の
物件になってしまいます。
総額3,500万円であれば、
平均的なサラリーマンが買えるとしても、
総額5,000万円となると
平均以上の高所得者でないと手が出せないかもしれません。
このように面積は総額と密接に関連しているため、
単価だけではなく、単価に面積を乗じた
総額にもしっかり目を配ることが大切です。
山林に注意
山林はそもそもの公簿が大きいほか、
さらに実測面積と大きく異なることが多いです。
特に、単価が高くなる市街地山林だと、
総額に及ぼす影響は甚大です。
仮に山奥の山林で単価が10円/㎡であれば、
総額10,000円と50,000円なので大勢に影響ありません。
しかし、市街地山林で30,000円/㎡だとすると、
3,000万円と1億5千万円というように
一気に総額に跳ね返ってきます。
単価だけの算定で満足することなく、
総額としても妥当であるかの検討が大切です。
単価と総額の関連
不動産鑑定評価基準では、以下のとおり規定されています。
「鑑定評価の手順の各段階について、
客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた
各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを
適切に反映することによりこれを行うものとする。」
「特に次の事項に留意すべき」として、
「単価と総額との関連の適否」が挙がっています。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
価格時点に続いての第2弾は「更地として」です。
実際は土地の上に建物があるのに、
評価の条件を付けて、建物が無い
「更地として」評価する場合のことです。
ここもちょっと見るだけでわかるポイントです。
同じ土俵で比べましょう
鑑定評価書がお手元に届いた時には、
「鑑定評価の条件」欄を
評価額や地図・写真と同じくらいすぐ見てください。
この条件をどのように設定するかによって、
結果としての価格も大きく変わってきます。
更地と古家付物件
仮に、築後相当年数が経っていて、
取り壊すしかない老朽建物(古家)があったとします。
建物を取り壊すには、
当たり前ですが取り壊し費用が必要です。
この土地建物を「現状のまま」評価する場合は、
「土地価格−取り壊し費用=評価額」となります。
1,000万円−200万円=800万円というイメージです。
しかし、評価条件を付けて、
老朽建物が無いものとした「更地として」だと、
建物の取り壊し費用が必要ないので、
土地価格1,000万円=評価額となります。
評価の対象となる不動産が同じでも、
条件次第で800万円と1,000万円というように
価格に差が出てくることになります。
そして、どちらの評価が正しいのか?
前提条件が違うだけなので、
どちらも正しいということになります。
実務でも常に評価条件を念頭に
裁判上の評価であっても、
「更地として」という評価条件が付いているのに、
相手側から「古い建物が建っている土地だから、
駅近くであっても価格は低い」というような
主張が出てくることがあったりします。
裁判官にも、どのような条件で
どのような価格を出しているか、
しっかりわかりやすく伝えることが大切です。
どうしても目の前の老朽建物に
目がいってしまいそうになりますが、
評価条件が「更地として」であれば、
その老朽建物は心の中で消してください。
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
このようなご質問も良く頂きます。
評価の考え方や数値が違うために
大きな差が出ている場合も多いのですが、
実はもっと単純なところで違っていたりします。
一見すればわかる
評価の対象となる不動産は同じ。
地番も地目も面積も同じ。
それなのにどうして?
いえいえ、もっと簡単に
違いがわかるところがあります。
それは「鑑定評価の条件」欄です。
それ、いつの値段?
不動産の価格は、時の流れとともに変わります。
昭和のはじめはとても安かったですが、
バブルの頃は非常に高く、
同じ物件でも大きく価格が異なります。
鑑定評価書にも、評価の前提条件として
“いつ時点の価格なのか”という
「価格時点」が必ず記載されています。
昭和と平成で価格が違うのは極端としても、
平成20年では@200万円だったものが、
平成30年には@350万円というように、
5〜10年の差でも大きく変わってくることがあります。
評価額だけを見て、いつ時点の価格か見ていないと、
ついつい「今(現在時点)の価格」だと思い込み、
今はもっと高い(安い)のに!と思ってしまいます。
ご相談を頂いた場合も、けっこうな割合で
評価の前提となる「価格時点」が異なっていたりします。
同じ土俵(同じ評価条件)にあったとしても、
不動産の価格には適正な“幅”があるのに、
価格時点まで異なってしまっては、
その開差はさらに広がるばかりです。
相手の価格時点は間違っていないか。
現在時点の価格とはどれくらい違うのか。
このあたりもしっかりチェックする必要があります。
過去、現在、将来の価格
不動産鑑定士は、過去時点、現在時点、将来時点
それぞれの価格を評価することができます。
(将来時点の評価は限定された場合のみ)
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
借家人は強い!
借家人(テナント)に立ち退いてもらいたいけど、
いくら提示すればよいかわからない。
逆に、相手から法外な立退料を要求されている。
このようなご相談もよく頂きます。
今回は、借家の立退料について書いてみたいと思います。
立退料の算定方法
当事者間で直接平和的に合意するのが一番ですが、
基準となる数字を出すためには以下の方法があります。
どちらか一方だけではなく、両者を併用する場合もあり、
正当事由の補完の必要性の程度でも大きく変わってきます。
■損失補償の観点から算定する方法
居住用であれば、「引っ越し実費」と「家賃差額」の補償で済みますが、
営業用であれば、さらに「営業損失」も補償が必要となります。
居住用の家賃差額補償は2年分程度であることが多いですが、
営業用であれば、業種・売上・移転先の状況など
個々の事情によって変動幅が大きいです。
また、営業用でも、飲食店などの場合は、
それぞれの実費項目についても、
お互いが自分に有利な見積もりを出し合ったり、
かなりの差が出てくることが多いです。
■借家権価格をもとに算定する方法
ざっくり言うと、賃借人としての地位に対する価格です。
ここに住める、営業できるなど、
使用収益できる権利に対する対価というイメージです。
借家権価格 = 更地価格 × 借地権価格 × 借家権価格 となります。
更地価格 : 賃借している建物の敷地部分の価格です。
借地権割合 : 相続税路線価に記載されている借地権割合
借家権割合 : 借地権割合と同じですが、ほぼ30%です。
仮に、更地価格5,000万円、借地権割合60%とすると、
5,000万円 × 60% × 30% = 900万円 となります。
路線価図の借地権割合は30%〜90%まであり、
一般的に市街地では借地権割合50%〜80%が多いです。
そのため、50%×30%=15%、80%×30%=24%となり、
借家権価格は、概ね更地価格の15〜25%程度であることが多いです。
「わたくしみち」
前回は道路の種類について整理しましたが、
今回は特に問題点やトラブルが多く、
よくご相談を頂く「私道」について取り上げます。
所有する土地の前の道路が「私道」になっていると、
今後どんなことが予想されるのか。
具体的に教えてほしいとのご相談が多いです。
なお、「私道」「市道」どちらも「しどう」ですので、
実務では「わたくしみち」「いちどう」と
使い分けることが多いです。
よくある問題点
私道は民間人(民間法人)が所有する道路です。
所有者との間で様々なトラブルが起こる可能性があります。
■通行料請求
ここは自分の所有地だから、
通行したい場合は月○万円払えという
請求をされる場合があります。
住んでいる限りずっと払い続ける必要があり、
大きな負担になってしまいます。
■通行拒否
上記からさらに発展して、
ここは自分の所有地だから通行させないと
通行自体を拒否される場合があります。
ブロックや車止めなどで
物理的に通行できないようにされることも。
特に、別荘地などでは道路がどうなっているか
チェックしておかないと大きな問題になります。
■建物建築への同意
接道状況によっては、私道所有者の同意が無いと
建物を建築(建て替え)できない場合があります。
また、同意に際し、同意料(ハンコ代)が必要なことも。
■上下水道ガスなどの埋設の同意
新しく上下水道の管を道路に敷設する場合や、
既存の老朽管を取り替える場合など
工事の際に同意が必要になる場合があります。
■アスファルト舗装の維持管理
私道の管理は原則的に所有者が行います。
維持管理をちゃんとしていないと、
アスファルトのひび割れや穴あきなど
通行に支障が出てくる場合があります。
舗装が古くなって管理ができなくなってから
市に寄付をしようとしても、
舗装を新しくやり直したり、道路を再整備した後でないと
市への移管を認めてもらえない場合もあります。
建築基準法上の道路かどうか
私道は民間人(民間法人)が所有していますので、
建築基準法上の道路として指定されていない私道だと、
ある日いきなり道路としての用途を廃止し、
道路でなくなってしまう可能性もあります。
そのため、ちゃんと指定のある道路だと
上記のようなトラブルは少ないですが、
指定のない道ではトラブルが多い傾向にあります。
相続の際に要注意
市区町村によって取り扱いが異なりますが、
私道が「公衆用道路」として非課税になっている場合、
毎年送られてくる課税明細書や固定資産評価証明書に
私道(地番)が載っていないことがあります。
ご相続の場合など、土地の所有関係に詳しくない場合、
知らないうちに私道が抜けてしまっていて、
相続登記ができていないことがあります。
できるだけ早いうちに気が付かないと、
多数の所有者の共有になっていることもあり、
将来的に大きな問題になる場合もあります。
「道路」って難しい!
実務をしていると、
いろんな「道路」が出てきてよくわからない。
この場合の道路はどう考えたらいいの?
このようなご質問も非常に多いです。
接道義務
建築基準法では、第43条で
「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない。」
と規定されています。
ここでいう「道路」とは、
建築基準法(第42条)で定められた
“ちゃんとした道路”でなければなりません。
幅員が広ければ必ずOKというわけでもなく、
幅員が狭くてもセットバックが必要ない道路もあります。
さらには建築基準法上の道路ではない
里道や道路状敷地、敷地内の舗装された通路など
あまりに千差万別なことが混乱しやすい原因だと思います。
「道路」とは?
そこで、まずは道路とは何かを
ちゃんと整理しておこうと思います。
建築基準法第42条には以下のとおり規定されています。
■42条1項1号
幅員4m以上の道路法による道路
国道・都道府県道・市区町村道などが該当します。
一般的に普段よく目にする道路です。
議会承認を経て、市区町村道に認定されることになります。
建築基準法上の道路判定とはまた別のルートで決まりますので、
必ずしも市区町村道=建築基準法上の道路とはなりません。
特に、幅員4m未満の場合は、さらなる調査が必要です。
■42条1項2号
開発道路です。
開発許可を受けて宅地分譲をする際に、
その開発区域内に新しく築造された道路です。
私有地なので「私道(わたくしみち)」に分類されます。
■42条1項3号
建築基準法施行以前からあった道路です。
幅員4m未満の道路も含みます。
下記の「2項道路」と非常に混同しやすく、
こちらの指定がある場合は、幅員が狭くても
セットバックをする必要はありません。
■42条1項4号
2年以内にその事業が執行される予定の道路として
特定行政庁が指定したものです。
実務ではあまりお目にかかりません。
■42条1項5号
位置指定道路です。
指定番号、指定年月日、認定幅員も確認します。
基準を満たした幅員4メートル以上の道で、
特定行政庁からその位置の指定を受けた道路です。
私有地なので「私道(わたくしみち)」に分類されます。
■42条2項
通称「2項道路」と言われます。
S25.11.23か、その地域が都市計画区域に指定された時に
現に存在する幅員1.8m以上〜4.0m未満の道路で、
既に建築物が建ち並んでおり、
その他特定行政庁が定める基準を満たす道路です。
2項道路はセットバックが必要となります。
セットバックとは
セットバックとは、
2項道路に対して適用される規定ですので、
4m未満の幅員でも42条1項3号道路の場合は
セットバックの必要はありません。
セットバック部分は道路とみなされてしまうので、
補償や買取などはありません。
また、みなし道路部分に
建築物を建築することもできません。
概要だけでも、けっこうな文量になってしまいました。
さらに具体的な内容については、
また改めて書きたいと思います。
土地の一部が道路になっているんだけど、
道路部分の固定資産税はちゃんと減額されてるのかな?
鑑定士さんにお願いしたら調べてもらえる?
このようなご質問もよく頂きます。
もちろん鑑定士にご依頼頂くこともうれしいのですが、
今回は調べ方を公開しちゃいます!
簡単なチェック方法
これだけチェックすれば、
非課税になっているかどうか簡単にわかります。
数字を比べるだけなら誰でもできますし、
その後の調査等は専門家に依頼すればスムーズです。
まずは登記簿と固定資産税の課税明細書を手元に揃えます。
(課税明細書は、評価証明書や公課証明書でもOKです)
課税明細書の課税地積と登記簿の公簿地積を比べます。
実際は一部道路になっているのに、
課税地積 宅地 100㎡
公簿地積 宅地 100㎡
というように、同じ地積である場合は
公衆用道路として減額されていない可能性が高いです。
一方、
課税地積 宅地 80㎡
公簿地積 宅地 100㎡
というように数量が異なっている場合は、
20㎡分は非課税になっている可能性が高いです。
なお、非課税部分については、
全て書面に記載されている市町村と
非課税部分は書面に記載しない市町村があります。
どんな場所が可能性高いの?
昭和40年代くらいまでの古い住宅団地や
昔からの既成市街地で見つかる可能性が高いです。
一方、最近新しく造成された住宅地などでは、
宅地部分と道路部分が明確に分かれていますので、
古くて歴史のある地域ほど
宅地の一部が道路となっていることがあります。
ざっくり調査フローチャート
当該道路部分が、固定資産税非課税となる
「公衆用道路」に該当するのかを調べます。
その上で、実際に固定資産税が
適正に課税されているかどうか調べます。
公衆用道路として非課税に該当するのに
誤って固定資産税が課税されている場合は、
市役所(町役場)担当課へ非課税申請をすることができます。
どうやって「公衆用道路」か調べるの?
その道路が市区町村道に指定されているか。
建築基準法上の道路となっているか。
実際に不特定多数の人が通行できる状態か。
役所の担当課や現地で調査を行います。
市区町村道や建築基準法上の道路であれば、
公衆用道路と認めてもらえる可能性が高いです。
もしこれらの指定が無くても、
現地の写真で道路として舗装(利用)されているとか
地図・公図等で不特定多数の人の通行が想定されるかを
さらに調べていくことになります。
「公衆用道路」は非課税
地方税法第348条第2項で「固定資産税は、
次に掲げる固定資産に対しては課することができない。」とされ、
その第5号に「公共の用に供する道路」があります。
実務でいうところの「公衆用道路」です。
登記地目とは関係なく、現況優先で判断されます。
具体的には、路地状敷地や専用通路などではなく、
不特定多数の人が利用する道路であることが必要です。
交渉の“モノサシ”に
不動産の価格は、時の流れで変化します。
また、同じ時点でも、価格には幅があり
適正な価格がいくらかわかりにくいのが実情です。
不動産の売買をする場合、
売主or買主が提示した価格は適正なのか、
ぼったくりされたりしていないか心配ですよね。
私がお付き合いのある業者さんはみなさん紳士ですが、
不動産業者さんの査定額が信頼できないと
ご相談を受ける場合もあったりします。
売主は高く売りたいし、買主は安く買いたい。
でも、様々な関係から無茶を言っているように
思われたりもしたくないし、どうしよう…。
こんな場合も、不動産鑑定士がお役に立ちます。
売主にも買主にも忖度しない
適正など真ん中の価格をお出しすることができます。
鑑定価格で売買しなければならないわけではなく、
交渉のスタートとなる基準をお示しします。
価格の見える化
たとえば、あなたが売主だったとしましょう。
買主とは特別な関係があるので、
相場で1,000万円の土地を
20%安く800万円で売ろうと考えます。
売主が提示した800万円は相場より20%も安いのですが、
買主は600万円が相場だと思っていたとします。
この場合、せっかく安く売ろうと親切に言ったのに、
買主は逆に200万円も高く売りつけられていると感じます。
このようにお互いが相場をちゃんと把握していないと、
どちらにとっても不幸せな結果となってしまいます。
ペットボトルは150円が定価だと知っているからこそ、
100円だと安いと思うし、200円だと高いと思う。
みんなが相場を共有しているから高い安いの話ができます。
あなたが買主の場合も同様です。
買主が相場は600万円だと思った上で、
高めの800万円で買おうと提示しているのに、
売主は1,000万円が相場だと思っていると、
高く提示したつもりが安く提示したことになります。
このようにスタートラインとなる価格を
お互いに共有することにより、
疑心暗鬼になることなく、売買期間も短縮できて
気持ちよく取引ができると思います。
よくあるご相談
交渉相手の価格が適正かどうか見てほしい。
相手にいくらで提示したらいいか教えてほしい。
更地の売買なら価格だけでほぼ大丈夫ですが、
古家付の物件であったり、収益物件であったり、
どのような前提条件で売買するのかによって
同じ物件でも価格が変わってくることがあります。
しっかり取引対象と前提条件を整理した上で、
適正な価格で売買するお手伝いをしていきたいです。
鑑定評価って何を見て値段付けるの?
地域要因三部作のラストは<工業地域>です。
工業地域は、高速道路インターチェンジ(IC)への接近性と
大きなトラックでも通れる幅員が重要な要素です。
工業地域の地域要因
不動産鑑定評価基準では、
先日挙げた住宅地の要因のほか、
工業地域特有の地域要因として7項目が例示されています。
この中から、評価実務に沿って
工業地域を見るチェックポイントをお話します。
■街路条件
現在の日本は陸運が中心です。
そのため、トラックが出入りしたり、
高速道路ICまでのルートが整備されていたり、
幅員や街路整備の状態が非常に重要です。
大きな工場であるほど、10tトラックなど
大きなトラックの出入りの便が重要になってきます。
そのため、6mが目安の住宅地域とは違い、
10m以上の幅員が喜ばれたりするケースも多いです。
また、広すぎると中央分離帯が出てくる場合もあり、
敷地への出入りの便がどうなっているか
現地での確認が大切です。
■交通接近条件
工場地域は、高速道路ICへの接近性が重要です。
実際の売買実例でも、IC近くの工業地域は人気が高く、
価格もしっかり付いていることが多いです。
一方、住宅地域や商業地域と違って、
鉄道駅との接近性はそれほど大きく考慮されません。
もちろん従業員の通勤の便もありますので、
あまり山の中だと人が集まらなくて困ることもあります。
AIや機械化が進むと、これも変わってくるかもしれません。
■環境条件
当初から工業用地として整備された工業団地であれば
比較的問題は少ないです。
一方、昔から工場だった自然発生的な工業地域は
周辺の住宅地域や商業地域との関係で、
騒音や煙、トラック往来などトラブルになるケースも。
また、工業用水が整備されていない地域だと、
進出できる業種が限定されることもあります。
■行政的条件
商業地域と違って、容積率はあまり問題になりません。
用途地域で工業専用地域に指定されていると、
将来的に住宅用途への転換ができないことに注意です。
土壌汚染に要注意!
土壌汚染の可能性が最も高いのは工業地域です。
土壌汚染対策法、水質汚濁防止法、下水道法の調査を行い、
現地で地下タンクの有無や有害物質の使用履歴等を確認し、
しっかりリスクを把握することが大切です。
場合によっては、指定調査機関と連携し、
土壌汚染リスクを適切に反映する必要があります。
土地価格が低い地域だと、
土地価格より浄化費用の方が高く見積もられたり、
様々な問題が出てきます。
鑑定評価の中では、条件により考慮外とすることもあり、
この場合は契約書で土壌汚染負担に関する条項を作るなど
適切にリスク管理をする必要があります。
工業地域にもさらに種類がある
工業地域といっても、さらに細分化できます。
大工場地域
中小工場地域 です。
大工場は、鑑定の中では3万㎡〜5万㎡以上、
固定資産評価では5万㎡以上の敷地規模が該当します。
少しの単価の違いで総額が大きく変わりますので、
しっかり説明力のある鑑定評価を行うことが大切です。
鑑定評価って何を見て値段付けるの?
「地域要因<住宅地域>」に続いて、
商業地域を取り上げたいと思います。
商業地域は、繁華性と収益性。
この2つが重要な要素です。
商業地域の地域要因
不動産鑑定評価基準では、
先に挙げた住宅地域の要因のほか、
商業地域特有の要因として10項目が例示されています。
この中から、評価実務に沿って
商業地域を見るチェックポイントをお話します。
■街路条件
商業地域でも幅員はとても重要です。
人と車の流れや量に直結します。
郊外の幹線道路沿いの商業地域では、
幅員だけではなく、主要国道や都道府県道など
「系統連続性」も大きなポイントになります。
単に幅員の広い狭いだけでは、
広い幅員の道路なんていっぱいありますし、
誰も通らない道路では商売しにくいですよね。
このような幹線沿いの商業地域では、
駐車場の広さや入りやすさ等も
収益性に大きな差が出てきます。
さらに、道路幅員が狭いと、
行政的条件で挙げる容積率にも影響が出てきます。
幅員が狭いと、本来の容積率が使えなくなります。
■交通接近条件
駅前や駅近くの商業地域であれば、
駅からの距離は大きな差になってきますし、
どの駅の近くかはさらに大きな差が出てきます。
都心部や特急停車駅など繁華性が高い駅のほうが
顧客の通行量が多く、高い収益性が見込めます。
また、駅だけに近ければよいわけでもありません。
商業核と言われる大型商業施設との位置関係も大切です。
■環境条件
住宅地域では生活利便性と居住環境が重要でしたが、
商業地域では繁華性と収益性が重要になります。
シャッターばかりの寂れた商店街よりも、
活気があって店舗がたくさん集まった商店街の方が
人もたくさん集まってきますし、収益性も上がります。
商業集積度が高く、背後人口も多い商業地域は
繁華性や収益性が高くなるので、価格も高くなります。
地方だと、繁華性や収益性が低いため、
徐々に商業地域から住宅地域に
なってきているところもあります。
■行政的条件
商業地域では、容積率が非常に重要です。
容積率が大きいほど、大きく高い建物が建てられます。
たとえば、同じ面積の土地でも、
5階建のビルしか建てられないところと
10階建てのビルが建てられるところでは、
全く違ってきますよね。
住宅地域や工業地域より、格差は大きくなります。
商業地域にもさらに種類がある
商業地域といっても、さらに細分化できます。
高度商業地域
準高度商業地域
普通商業地域
近隣商業地域
郊外路線商業地域 です。
(準)高度は、特に発展した都会の駅前商業地域。
普通は、地方の駅前商業地域など。
近隣は、日用品を買う程度のちょっとした商業地域。
郊外路線は、国道などロードサイドの商業地域です。
細分化された地域によって、
上記項目の影響の程度はそれぞれ変わってきます。
士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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