士業専用ダイヤル
鑑定評価ってどんな計算をするの?
どうやって価格を決めているの?
なんとなく“職人芸”のようなところもあり、
あまり知られていないのではないでしょうか。
価格を求める基本的な3手法には、
原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つがあります。
今回は、そのうち「原価法」についてお話します。
原価法
コストアプローチとも言われます。
その不動産をもう一度作った場合にいくらかかるのか。
コストから不動産の価格を求める手法です。
建物が一番わかりやすいと思うのですが、
この建物を今建てるといくらかかるのか(再調達原価)、
築後何年経過し、どのような減価があるのか(減価修正)
ということから、価格を求める手法です。
たとえば、もう一度建てるとすると3,000万円かかる。
築後10年経過して、1,000万円の減価が認められる。
3,000万円−1,000万円=2,000万円
というような流れです。
土地の場合でも、
材料を2,000万円で仕入れる(田んぼを購入する)
材料を1,000万円で加工する(田んぼを造成して宅地にする)
販管費・開発利潤として500万円を見込む。
仕入れ+加工費+販管費・開発利潤=3,500万円という流れです。
このように、土地は新しく造成された場合に
原価法を適用することができます。
一方、既成市街地や古くからの既成住宅地域では、
当初の“仕入れ価格”や“加工費”がわからないため、
適用を断念することになります。
そのため、鑑定評価書において、
土地の価格を原価法で求めるケースはほとんどなく、
次回お話する取引事例比較法で求めることが大半です。
■再調達原価
建物の場合、もう一度建てる場合にいくらかかるのか
現地で一見しただけでは建築費がわからないことが多く、
裁判上の評価などでも争点の1つとなることが多いです。
同じ築年数であれば、再調達原価が高い方が
結果として現時点の価格も高くなりますので、
実際の建築費、建築費指数、国税の標準的な建築価額表、
JBCI(ジャパン・ビルディング・コスト・インフォメーション)など
様々な資料を用いて説得力ある再調達原価を求めることが大切です。
■減価修正
いわゆる減価償却のような経年減価だけではなく、
実際に現地で建物を観察して減価の程度を把握します。
雨漏りやクラックのような物理的減価、
設備や機能の陳腐化をはじめとする機能的減価、
都心より山奥の方が市場性は劣るという経済的減価
をしっかり調査分析することが大切です。
今回は土砂災害(特別)警戒区域についてです。
最近は異常気象で災害が頻発することが多く、
土砂災害についても関心が高まっていると思います。
土砂災害(特別)警戒区域って?
イエローゾーンとレッドゾーンに分かれ、
“特別警戒”のレッドゾーンのほうが
土地利用規制や価格への影響が大きくなっています。
地図で等高線が密集しているところや、
現地で急な山がすぐ近くにある場合等には
しっかり確認することが大切です。
指定の有無は、都道府県や市町村の
ホームページなどで確認することができます。
■土砂災害警戒区域
通称イエローゾーンです。
「土砂災害が発生した場合に、住民の生命または
身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、
土砂災害を防止するために
警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」です。
土石流、地すべり、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)
の3つに分けられます。
■土砂災害特別警戒区域
通称レッドゾーンです。
「土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ
住民等の生命又は身体に著しい危害が
生ずるおそれがあると認められる区域」です。
土地価格への影響
■固定資産評価
イエローゾーンに対して減額補正はありません。
一方、レッドゾーンの場合には、評価額に対して
▲30%の減額補正をされることが多いです。
市町村によって減額補正の有無や減額割合が
異なる場合もありますので、
詳細は各市町村の固定資産税担当課でご確認ください。
■相続税評価
「土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価」
として、通達が出ています。
イエローゾーンについては、「区域指定以前から
当該危険性の存在は認識されている場合が多く、
また、土砂災害発生の危険性は警戒区域内外にわたり
比較的広範囲に及んでいることから、
土地価格の水準に既に織り込まれているとも考えられる。」
とされていて、減価補正はありません。
「既に織り込まれている」かどうか、
鑑定士的には疑問が残る地域もありますが…。
レッドゾーンについては、「特別警戒区域補正率表」で
面積割合によって▲10%〜▲30%の補正が入ります。
■鑑定評価
土地利用規制があり、需要にも影響がありますので、
価格にはマイナスに作用します。
イエローゾーンでも、地域の価格水準に
既に織り込まれておらず、需要に影響があれば
一定のマイナスをすることも考えられます。
レッドゾーンの場合は、上記と同じように
ある程度しっかりとした減額割合となることが多いです。
レッドゾーンと開発許可(宅地転用)
レッドゾーンに指定されていると、
それだけで開発許可を得られない要件に該当し、
宅地転用できない場合が多いです。
特に、市街地山林などの場合、
安易に通達評価に従い、前面路線価や造成費等を用いて
転用前提で評価することには注意が必要です。
そもそも開発許可が得られない土地は、
転用見込みが無いと判断されることも考えられます。
この場合、過大な評価額で申告することになってしまいます。
今回は評価単位についてです。
区画整然とした住宅団地の戸建住宅であれば、
1筆の土地の上に1棟の建物が建っているので、
この土地建物で1つの評価単位となるのは
とてもわかりやすいと思います。
しかし、複数筆の土地の上に、
共同住宅、戸建住宅、駐車場などが混在していると、
全部を一括して1つの評価単位とするのか、
共同住宅、戸建住宅、駐車場と3つに分けるのか。
これだけでも評価の前提が異なってきますので、
3つに分けて評価した場合の総合計が、
一括して1つで評価した価格と一致するとは限りません。
評価単位はそれぞれ異なる
鑑定評価における評価単位、
国税の評価通達における評価単位、
固定資産評価における評価単位、
現況の土地利用状況は、
それぞれ必ずしも一致するとは限りません。
評価単位が異なると、
規模、接道状況、形状などが異なってくるため、
結果として価格も変わってくることになります。
鑑定評価
基本的には、売却単位=評価単位です。
評価の対象となる不動産のみで売却可能かどうか。
現況、地目、土地利用状況等を踏まえて判断します。
とはいえ、これまでお話しした通り、
「鑑定評価の条件」で様々な評価単位を設定できます。
最も柔軟に決められるのが鑑定評価ではないでしょうか。
上記の例では、一括して1つで評価もできますし、
3つに分けて評価することもできます。
どちらも正しいことなので、問題はありません。
評価通達(相続税)
「No.4603 宅地の評価単位」に記載されています。
ここで大切なことは、
相続税評価を不動産鑑定士にご依頼される場合、
税務上の評価単位と鑑定評価上の評価単位が
一致しているかどうかをご確認ください。
「評価下がりそうですか?」と聞かれて、
異なった評価単位を前提に「下がります!」と
不動産鑑定士が回答している場合があるからです。
上記の例では、税務上は3つに分けないとダメなのに、
鑑定評価上は一括して1つで評価をすると、
土地利用状況や規模等から評価が下がるという場合です。
これはどちらが悪いというわけではなく、
それぞれの考え方や制度の違いによるものです。
しかし、評価単位が違っていると、
将来的な税務リスクが非常に高くなってしまいます。
固定資産評価
評価単位を決めることは「画地認定」と言います。
基本的には地目、土地利用状況、所有者等で決まります。
鑑定評価や評価通達と異なることは、
所有者が別であっても、1つの評価単位として
認定される場合があるということです。
A土地にA店舗建物、B土地にB店舗建物があり、
それぞれ所有者はAさん、Bさんだとします。
しかし、ABは駐車場を共有し、出入口も同じで
一体的に利用されているような場合は、
ABの土地をセットで1評価単位となることもあります。
また、自宅に隣接する駐車場についても、
柵などで明確に区分されているかどうかで
駐車場を含む1つの自宅敷地となるか、
自宅1つと駐車場1つの
2つの評価単位になるか決まったりします。
市町村によって取り扱いが
微妙に異なる場合がありますので、
気になる場合はご確認頂くとよいと思います。
今回は公簿面積と実測面積が異なる場合です。
面積は総額の大小に直結します。
普段は単価ばかりに目が行きがちですが、
単価×面積=総額もしっかり見てください。
実際の売買代金は、この総額になります。
公簿と実測
公簿面積とは、登記記録(登記簿)記載の面積のことです。
公簿が最近測量して登記されたものであれば、
実測面積とほぼ一致します。
しかし、昔からの地積をそのまま引き継いでいる場合や
分筆した残地として面積が計算されている場合は、
実測面積と大きく異なることも珍しくありません。
また、縄伸び縄縮みが大きい地域もあります。
仮に、公簿150㎡なのに、実測300㎡だと、
同じ100,000円/㎡という土地単価が正しくても、
総額が1,500万円と3,000万円とで大きく異なってきます。
単価と総額
たとえば、新築戸建の相場が3,500万円とした場合、
土地1,500万円であれば2,000万円の建物を建てられます。
一方、土地3,000万円では、総額3,500万円では足らず、
少なくとも総額4,500万円〜5,000万円程度の
物件になってしまいます。
総額3,500万円であれば、
平均的なサラリーマンが買えるとしても、
総額5,000万円となると
平均以上の高所得者でないと手が出せないかもしれません。
このように面積は総額と密接に関連しているため、
単価だけではなく、単価に面積を乗じた
総額にもしっかり目を配ることが大切です。
山林に注意
山林はそもそもの公簿が大きいほか、
さらに実測面積と大きく異なることが多いです。
特に、単価が高くなる市街地山林だと、
総額に及ぼす影響は甚大です。
仮に山奥の山林で単価が10円/㎡であれば、
総額10,000円と50,000円なので大勢に影響ありません。
しかし、市街地山林で30,000円/㎡だとすると、
3,000万円と1億5千万円というように
一気に総額に跳ね返ってきます。
単価だけの算定で満足することなく、
総額としても妥当であるかの検討が大切です。
単価と総額の関連
不動産鑑定評価基準では、以下のとおり規定されています。
「鑑定評価の手順の各段階について、
客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた
各試算価格又は各試算賃料が有する説得力の違いを
適切に反映することによりこれを行うものとする。」
「特に次の事項に留意すべき」として、
「単価と総額との関連の適否」が挙がっています。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
価格時点に続いての第2弾は「更地として」です。
実際は土地の上に建物があるのに、
評価の条件を付けて、建物が無い
「更地として」評価する場合のことです。
ここもちょっと見るだけでわかるポイントです。
同じ土俵で比べましょう
鑑定評価書がお手元に届いた時には、
「鑑定評価の条件」欄を
評価額や地図・写真と同じくらいすぐ見てください。
この条件をどのように設定するかによって、
結果としての価格も大きく変わってきます。
更地と古家付物件
仮に、築後相当年数が経っていて、
取り壊すしかない老朽建物(古家)があったとします。
建物を取り壊すには、
当たり前ですが取り壊し費用が必要です。
この土地建物を「現状のまま」評価する場合は、
「土地価格−取り壊し費用=評価額」となります。
1,000万円−200万円=800万円というイメージです。
しかし、評価条件を付けて、
老朽建物が無いものとした「更地として」だと、
建物の取り壊し費用が必要ないので、
土地価格1,000万円=評価額となります。
評価の対象となる不動産が同じでも、
条件次第で800万円と1,000万円というように
価格に差が出てくることになります。
そして、どちらの評価が正しいのか?
前提条件が違うだけなので、
どちらも正しいということになります。
実務でも常に評価条件を念頭に
裁判上の評価であっても、
「更地として」という評価条件が付いているのに、
相手側から「古い建物が建っている土地だから、
駅近くであっても価格は低い」というような
主張が出てくることがあったりします。
裁判官にも、どのような条件で
どのような価格を出しているか、
しっかりわかりやすく伝えることが大切です。
どうしても目の前の老朽建物に
目がいってしまいそうになりますが、
評価条件が「更地として」であれば、
その老朽建物は心の中で消してください。
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
相手からこんなに高い(安い)価格が出てきた。
どうしてこんな価格なのか。おかしい!
このようなご質問も良く頂きます。
評価の考え方や数値が違うために
大きな差が出ている場合も多いのですが、
実はもっと単純なところで違っていたりします。
一見すればわかる
評価の対象となる不動産は同じ。
地番も地目も面積も同じ。
それなのにどうして?
いえいえ、もっと簡単に
違いがわかるところがあります。
それは「鑑定評価の条件」欄です。
それ、いつの値段?
不動産の価格は、時の流れとともに変わります。
昭和のはじめはとても安かったですが、
バブルの頃は非常に高く、
同じ物件でも大きく価格が異なります。
鑑定評価書にも、評価の前提条件として
“いつ時点の価格なのか”という
「価格時点」が必ず記載されています。
昭和と平成で価格が違うのは極端としても、
平成20年では@200万円だったものが、
平成30年には@350万円というように、
5〜10年の差でも大きく変わってくることがあります。
評価額だけを見て、いつ時点の価格か見ていないと、
ついつい「今(現在時点)の価格」だと思い込み、
今はもっと高い(安い)のに!と思ってしまいます。
ご相談を頂いた場合も、けっこうな割合で
評価の前提となる「価格時点」が異なっていたりします。
同じ土俵(同じ評価条件)にあったとしても、
不動産の価格には適正な“幅”があるのに、
価格時点まで異なってしまっては、
その開差はさらに広がるばかりです。
相手の価格時点は間違っていないか。
現在時点の価格とはどれくらい違うのか。
このあたりもしっかりチェックする必要があります。
過去、現在、将来の価格
不動産鑑定士は、過去時点、現在時点、将来時点
それぞれの価格を評価することができます。
(将来時点の評価は限定された場合のみ)
価格が一番の関心事なのはもちろんですが、
少し落ち着いてすぐ近くを見てみると、
相手の価格との違いは
思いのほかこんな簡単な理由だったりします。
借家人は強い!
借家人(テナント)に立ち退いてもらいたいけど、
いくら提示すればよいかわからない。
逆に、相手から法外な立退料を要求されている。
このようなご相談もよく頂きます。
今回は、借家の立退料について書いてみたいと思います。
立退料の算定方法
当事者間で直接平和的に合意するのが一番ですが、
基準となる数字を出すためには以下の方法があります。
どちらか一方だけではなく、両者を併用する場合もあり、
正当事由の補完の必要性の程度でも大きく変わってきます。
■損失補償の観点から算定する方法
居住用であれば、「引っ越し実費」と「家賃差額」の補償で済みますが、
営業用であれば、さらに「営業損失」も補償が必要となります。
居住用の家賃差額補償は2年分程度であることが多いですが、
営業用であれば、業種・売上・移転先の状況など
個々の事情によって変動幅が大きいです。
また、営業用でも、飲食店などの場合は、
それぞれの実費項目についても、
お互いが自分に有利な見積もりを出し合ったり、
かなりの差が出てくることが多いです。
■借家権価格をもとに算定する方法
ざっくり言うと、賃借人としての地位に対する価格です。
ここに住める、営業できるなど、
使用収益できる権利に対する対価というイメージです。
借家権価格 = 更地価格 × 借地権価格 × 借家権価格 となります。
更地価格 : 賃借している建物の敷地部分の価格です。
借地権割合 : 相続税路線価に記載されている借地権割合
借家権割合 : 借地権割合と同じですが、ほぼ30%です。
仮に、更地価格5,000万円、借地権割合60%とすると、
5,000万円 × 60% × 30% = 900万円 となります。
路線価図の借地権割合は30%〜90%まであり、
一般的に市街地では借地権割合50%〜80%が多いです。
そのため、50%×30%=15%、80%×30%=24%となり、
借家権価格は、概ね更地価格の15〜25%程度であることが多いです。
「わたくしみち」
前回は道路の種類について整理しましたが、
今回は特に問題点やトラブルが多く、
よくご相談を頂く「私道」について取り上げます。
所有する土地の前の道路が「私道」になっていると、
今後どんなことが予想されるのか。
具体的に教えてほしいとのご相談が多いです。
なお、「私道」「市道」どちらも「しどう」ですので、
実務では「わたくしみち」「いちどう」と
使い分けることが多いです。
よくある問題点
私道は民間人(民間法人)が所有する道路です。
所有者との間で様々なトラブルが起こる可能性があります。
■通行料請求
ここは自分の所有地だから、
通行したい場合は月○万円払えという
請求をされる場合があります。
住んでいる限りずっと払い続ける必要があり、
大きな負担になってしまいます。
■通行拒否
上記からさらに発展して、
ここは自分の所有地だから通行させないと
通行自体を拒否される場合があります。
ブロックや車止めなどで
物理的に通行できないようにされることも。
特に、別荘地などでは道路がどうなっているか
チェックしておかないと大きな問題になります。
■建物建築への同意
接道状況によっては、私道所有者の同意が無いと
建物を建築(建て替え)できない場合があります。
また、同意に際し、同意料(ハンコ代)が必要なことも。
■上下水道ガスなどの埋設の同意
新しく上下水道の管を道路に敷設する場合や、
既存の老朽管を取り替える場合など
工事の際に同意が必要になる場合があります。
■アスファルト舗装の維持管理
私道の管理は原則的に所有者が行います。
維持管理をちゃんとしていないと、
アスファルトのひび割れや穴あきなど
通行に支障が出てくる場合があります。
舗装が古くなって管理ができなくなってから
市に寄付をしようとしても、
舗装を新しくやり直したり、道路を再整備した後でないと
市への移管を認めてもらえない場合もあります。
建築基準法上の道路かどうか
私道は民間人(民間法人)が所有していますので、
建築基準法上の道路として指定されていない私道だと、
ある日いきなり道路としての用途を廃止し、
道路でなくなってしまう可能性もあります。
そのため、ちゃんと指定のある道路だと
上記のようなトラブルは少ないですが、
指定のない道ではトラブルが多い傾向にあります。
相続の際に要注意
市区町村によって取り扱いが異なりますが、
私道が「公衆用道路」として非課税になっている場合、
毎年送られてくる課税明細書や固定資産評価証明書に
私道(地番)が載っていないことがあります。
ご相続の場合など、土地の所有関係に詳しくない場合、
知らないうちに私道が抜けてしまっていて、
相続登記ができていないことがあります。
できるだけ早いうちに気が付かないと、
多数の所有者の共有になっていることもあり、
将来的に大きな問題になる場合もあります。
「道路」って難しい!
実務をしていると、
いろんな「道路」が出てきてよくわからない。
この場合の道路はどう考えたらいいの?
このようなご質問も非常に多いです。
接道義務
建築基準法では、第43条で
「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない。」
と規定されています。
ここでいう「道路」とは、
建築基準法(第42条)で定められた
“ちゃんとした道路”でなければなりません。
幅員が広ければ必ずOKというわけでもなく、
幅員が狭くてもセットバックが必要ない道路もあります。
さらには建築基準法上の道路ではない
里道や道路状敷地、敷地内の舗装された通路など
あまりに千差万別なことが混乱しやすい原因だと思います。
「道路」とは?
そこで、まずは道路とは何かを
ちゃんと整理しておこうと思います。
建築基準法第42条には以下のとおり規定されています。
■42条1項1号
幅員4m以上の道路法による道路
国道・都道府県道・市区町村道などが該当します。
一般的に普段よく目にする道路です。
議会承認を経て、市区町村道に認定されることになります。
建築基準法上の道路判定とはまた別のルートで決まりますので、
必ずしも市区町村道=建築基準法上の道路とはなりません。
特に、幅員4m未満の場合は、さらなる調査が必要です。
■42条1項2号
開発道路です。
開発許可を受けて宅地分譲をする際に、
その開発区域内に新しく築造された道路です。
私有地なので「私道(わたくしみち)」に分類されます。
■42条1項3号
建築基準法施行以前からあった道路です。
幅員4m未満の道路も含みます。
下記の「2項道路」と非常に混同しやすく、
こちらの指定がある場合は、幅員が狭くても
セットバックをする必要はありません。
■42条1項4号
2年以内にその事業が執行される予定の道路として
特定行政庁が指定したものです。
実務ではあまりお目にかかりません。
■42条1項5号
位置指定道路です。
指定番号、指定年月日、認定幅員も確認します。
基準を満たした幅員4メートル以上の道で、
特定行政庁からその位置の指定を受けた道路です。
私有地なので「私道(わたくしみち)」に分類されます。
■42条2項
通称「2項道路」と言われます。
S25.11.23か、その地域が都市計画区域に指定された時に
現に存在する幅員1.8m以上〜4.0m未満の道路で、
既に建築物が建ち並んでおり、
その他特定行政庁が定める基準を満たす道路です。
2項道路はセットバックが必要となります。
セットバックとは
セットバックとは、
2項道路に対して適用される規定ですので、
4m未満の幅員でも42条1項3号道路の場合は
セットバックの必要はありません。
セットバック部分は道路とみなされてしまうので、
補償や買取などはありません。
また、みなし道路部分に
建築物を建築することもできません。
概要だけでも、けっこうな文量になってしまいました。
さらに具体的な内容については、
また改めて書きたいと思います。
土地の一部が道路になっているんだけど、
道路部分の固定資産税はちゃんと減額されてるのかな?
鑑定士さんにお願いしたら調べてもらえる?
このようなご質問もよく頂きます。
もちろん鑑定士にご依頼頂くこともうれしいのですが、
今回は調べ方を公開しちゃいます!
簡単なチェック方法
これだけチェックすれば、
非課税になっているかどうか簡単にわかります。
数字を比べるだけなら誰でもできますし、
その後の調査等は専門家に依頼すればスムーズです。
まずは登記簿と固定資産税の課税明細書を手元に揃えます。
(課税明細書は、評価証明書や公課証明書でもOKです)
課税明細書の課税地積と登記簿の公簿地積を比べます。
実際は一部道路になっているのに、
課税地積 宅地 100㎡
公簿地積 宅地 100㎡
というように、同じ地積である場合は
公衆用道路として減額されていない可能性が高いです。
一方、
課税地積 宅地 80㎡
公簿地積 宅地 100㎡
というように数量が異なっている場合は、
20㎡分は非課税になっている可能性が高いです。
なお、非課税部分については、
全て書面に記載されている市町村と
非課税部分は書面に記載しない市町村があります。
どんな場所が可能性高いの?
昭和40年代くらいまでの古い住宅団地や
昔からの既成市街地で見つかる可能性が高いです。
一方、最近新しく造成された住宅地などでは、
宅地部分と道路部分が明確に分かれていますので、
古くて歴史のある地域ほど
宅地の一部が道路となっていることがあります。
ざっくり調査フローチャート
当該道路部分が、固定資産税非課税となる
「公衆用道路」に該当するのかを調べます。
その上で、実際に固定資産税が
適正に課税されているかどうか調べます。
公衆用道路として非課税に該当するのに
誤って固定資産税が課税されている場合は、
市役所(町役場)担当課へ非課税申請をすることができます。
どうやって「公衆用道路」か調べるの?
その道路が市区町村道に指定されているか。
建築基準法上の道路となっているか。
実際に不特定多数の人が通行できる状態か。
役所の担当課や現地で調査を行います。
市区町村道や建築基準法上の道路であれば、
公衆用道路と認めてもらえる可能性が高いです。
もしこれらの指定が無くても、
現地の写真で道路として舗装(利用)されているとか
地図・公図等で不特定多数の人の通行が想定されるかを
さらに調べていくことになります。
「公衆用道路」は非課税
地方税法第348条第2項で「固定資産税は、
次に掲げる固定資産に対しては課することができない。」とされ、
その第5号に「公共の用に供する道路」があります。
実務でいうところの「公衆用道路」です。
登記地目とは関係なく、現況優先で判断されます。
具体的には、路地状敷地や専用通路などではなく、
不特定多数の人が利用する道路であることが必要です。
士業の先生の不動産評価に関するご相談、お待ちしています

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